野球拳

 拳法としての野球拳と言うものを真剣に考えてみました。
 事の発端は大八極の左右分掌をやってみた時のこと。「これってセーフの動きに似てね?」と思ったわけです。手を交差させる動きは相手の手を引き込む動作、その後の手を伸ばす動きは崩した相手に貫き手を打ち込む動作。それを套路の上では左右同時にやっているのだ、と思えばあら不思議、これって武術っぽい動きですよ。
 そういう頭でバッティングポーズも解析。最初に前に突き出すのは牽制。そこから大きく後ろに引き込むのは相手の手をつかんで引き崩す動作。そこから踏み込んで体重移動しつつ打ち込む…細かいとこに差はあれど小纏→拗歩冲拳の動きに通ずるものがありますね。
 投球動作にいたってはかなり複雑。ワインドアップで両手をあげる動きは相手の手を跳ね上げる動作、そこから左足を上げるのは牽制の下段orガード、体をねじる動作は手で相手の腕を引き込む動き。そして体制の崩れた相手に上段を打ち込む、という攻防一体の理に適った技なんですよウン。
 となれば野球拳の基本的動作、アウト・セーフ・よよいのよいにも深遠な意味があるに違いありません。そもそも野球拳の原型は元禄花見踊りで、それをアレンジした踊りの後に野球のモーションやって狐拳で勝負してたそうですが(今は本家もジャンケン、ちなみに脱衣はなし)、ここではメジャーな脱衣版を考えてみます。まずは花見踊りの動きで相手に近づきます。相手の油断を誘うことにも使えますし、また武術とは一線を画した動きで相手の読みを外す効果もあるでしょう。アウトの動作は打ち下ろし、いわゆる劈拳の動作。これを入れて相手を牽制し、セーフの動作で相手の腕を引き込んで体制を崩し貫き手を突きこむ。よよいのよいで再び相手を引き込んで崩し、グーなら拳、チョキなら目潰し、パーなら掌を打ち込むというわけです。さらに脱衣は相手を油断させると共に引き込み絡め取るという動きに応用できます。まさに絶招というに相応しい妙技と言えるのではないでしょうか。
 ざっと見ただけでも野球の動作はこのように恐ろしい技としての可能性を秘めています。野球を嗜む人は知らず知らず武術家としての修行をしていると言えるでしょう。バットを持っていないからといってその戦闘力を過小評価しては手痛いしっぺ返しを受けると思います。注意されたし。