矢島最高

 要はプロレス中継最高。矢島最高。
 小橋復帰戦は素晴らしかった。確かに素晴らしかったけどプロレス興味ない人を吸引するだけのアレがあったかというと正直微妙だったかもしれない。プロレスを知らない人や偏見を持つ人は多いし、そういった人達が何の予備知識もなく武道館に行ったところで俺達と同じような感動を得られたかというとそれはNoだろう。実際一緒に行ったプロレス好きだけど熱烈なアレと言う程ではない我が強敵は泣いてなかった。武道館の異様な熱気に煽られヒートアップしてたものの、入場前から涙流して号泣しながら鼻声小橋コールやり、小橋の一挙手一投足にこみあげてきてまた涙し、最後まで戦い抜いた小橋の姿にまた涙ボロボロだった俺と感動を共有するには至らなかった。
 しかしテレビで復帰戦見た人は違った。「プロレスとか全然知らないけど、これ見たら皆泣く」と母は言った。実況が小橋の現状を伝え、小橋の復帰戦への想い、プロレスへの想いを語ることで、ただ現場にいただけではわからないこの復帰戦の意義を視聴者にしっかり届けた。それがプロレスを知らない人にも小橋の凄さを伝え、感動に至らしめたのだと思う。
 安易なお涙頂戴がいいとは言ってないし、それに固執してスポーツ実況の本筋を見失ってはいけないとは思う。でも日テレはあくまでも脇役に徹しながら、あの復帰戦を楽しむための様々な要素を提供し、あの試合で感動するための手助けをしてくれた。それは素晴らしいことではないだろうか。
 よく「あの試合はもっと多くの人にアピールすることが出来たはずだ。プロレスファンのみならず一般の人にも見てもらえばプロレス業界にとってプラスになったのにもったいない」という声を聞く。ドーム興行をやるべきだったとも。確かに前者については俺も賛成だが、後者についてはNoだ。前述したようにただ会場で見ただけでは一般人にはその感動を十二分に味わうことは出来ないと思う。ただでさえドームというプロレス観戦向きとは言いがたい会場で、ろくすっぽ情報・知識のない人がいきなりあの試合を見せられても正直よくわからんまま終わってしまうだろう。ファンの異常な熱狂ぶりに圧倒されて「凄い」とは思ってもただそれだけ。感動するかというとちょっと難しいのではないだろうか。
 だがテレビは違う。プロレスを知らない人でも感動できた。あの試合を存分堪能できた。多くの人に元気を与え、病気で苦しむ人に力を与えた。これをもしゴールデンでやっていればより多くの人に多くのものを与えることが出来たんじゃないかと思うと少し残念である。しっかりと番宣を行い、小橋が如何に凄いことをやるのかということを知らしめた上でゴールデンタイムに放送すれば、かなりの注目を浴びたんじゃないだろうか。下世話な話だが視聴率も取れたと思う。日テレはプロレス中継に真摯でホントに頭が下がるし、スタッフは誇りを持ってやってくれていると思うけど、一般層に向けたコンテンツとしての自信を失ってしまっている感がある。03年の三沢VS小橋戦での視聴率が芳しくなかったからだろうか。確かにプロレスというジャンル単体では残念ながらそれほどの訴求力はないかもしれない。けど今回に限ってはプロレスという枠を超えたものだった。スポーツ中継のみならずドキュメンタリーとしての要素も持っていた。スポーツ中継としてはある意味邪道かもしれないが、テレビ屋としてこれを利用しないのはちょっともったいないのではなかったか。正直残念である。
 まだ小橋復帰戦を見ていない人は是非見て欲しい。プロレス好きでもそうでなくても、きっと何か心に残ると思う。最後に一言、矢島最高!


追記:こっちの方が編集されてないからいいかも。入場からもうガチ泣きですよウン。矢島最高。






さらに追記:小橋入場の時にライトアップされた千羽鶴、左の方にあるカラフルな奴は多分俺が送ったのだわ。あの時鶴一緒に折ってくれた皆さんありがとう。