傘など…傘などいらぬ

 天気予報で雨は降らんと言う話なので、傘を持たずに家を出ました。…が、数歩歩いたところでポツリポツリと水滴が…アレレ?
 ここで「雨降ったじゃねぇかコラ!テメェでケツ拭かんかタココラ!」と叫ぶのもいいでしょうし、予報を盲信して傘を準備しなかった己の愚かさを悔いるのもいいでしょう。だが俺は違う!
 百戦錬磨の天気予報士さんにとって、この程度は雨ではないのだ。「予報間違ったぞコラ!」と謝罪と補償を求めにテレビ局に押し寄せた者どもは見ることだろう、数多の水滴に曝されながらも雄々しく立つ漢達の姿を!「雨?この程度の水滴、雨というほどではない!」と背中で語る彼らの姿に心打たれ、黙って引き下がる群衆の姿が目に浮かぶようだ。
 そうだ、この程度は雨ではない。元より空気中には数多の水蒸気が存在しているのだ。その一部が液体となっただけで何を騒ぐことがあろう?雨だ、と認めてしまうことは簡単だ。傘で身を守ることも容易。だが、「雨だから傘をさす」という固定観念に縛られ、わずかな水滴から逃げるようでは、やがてぶつかるであろうより大きな壁、困難にどうしてあらがうことが出来ようか!?故に俺はタチムカウ。タチムカウために弱い自分を叱咤し、自らの認識を改善し、己の肉体を強化し、予報士に共感し、今、古き殻を打ち破って新たな自分を精製する――!
 そうだ、これは雨ではない。ならば、傘を使う必要などあるはずがない!雨ならばこの身体を蝕むこともあろうが、雨でなければどうということはない!
 …んなことを考えながら歩いていたので水滴なんぞ気になりませんでした。朝っぱらから島本和彦奈須きのこ入り過ぎ(笑)。