こいつはすごいぜ!

 最近読んだ漫画でパロディに使われていたのを見てから懐かしくて気になってる作品があります。「超人機メタルダー」。
 今から18年位前、当時俺は小学4年生でした。当時子供向け特撮からとりあえず卒業していた俺はこの作品の第1話も当然見てなかったわけですが…。見たクラスメート曰く「いきなりヒーローが負けた。」この手のヒーロー物はとりあえず初回は颯爽と登場しバッタバッタと敵をなぎ倒して強さをアピールするのが当時の常識だっただけに、視聴したお子様達は混乱の極致。人伝に聞いた俺ですら「何じゃそりゃ」と思ったわけで、とりあえず第2話を見てみることにしたわけです。
 まずはオープニング。タイトルがババンと出ると共に重層な音楽が鳴り響き、「おお、かっちょええ!」と思うのもつかの間、突然上半身裸の男(主人公)が日本刀を片手に砂浜を疾走、やたらめったら刀を振り回すという衝撃シーンに出くわします。ホントにやったら確実に捕まりそうなイカス振る舞いに心はある意味鷲掴み。しかも主題歌がまた凄い。いきなり「君の青春は輝いているか」で始まって、「本当の自分を隠してはいないか」とか「ちっぽけな幸せに妥協してはいないか」とか、子供へのメッセージとはとても思えないかっとんだ語りかけをしてくれるのでこれまた「何じゃこりゃ」なわけです。佐々木功御大の声で言われると「あれ?俺ってホントは幸せじゃないのかな…」とか悶々としてしまうんですよ(笑)。後で思うと作品のテーマにもマッチしててスゲェいい曲なんですけどね、当初はかなりたまげました。個人的には2番の歌詞が好き。「負けたと思うまで人間は負けない」ってのはいい響きです。
 まぁそんな感じでインパクト抜群な主題歌を経て本編へ。前回のおさらいという感じでメタルダー誕生の話がアレコレ語られました。で、問題のシーン。負けてる、ホントに負けてるよ!自分を目覚めさせた博士が殺され、何だかよくわからんうちに自分もやられそうになり、変身したはいいけど戦い方がわからず、挙句の果てにいきなり敵の大物が出てきて一閃。見事なやられっぷりです。そして辛くも一命を取り留めたメタルダー、丘の上で沈む夕日を眺めこう叫びます。「風よ、雲よ、太陽よ!心あらば教えてくれ。何故この世に生まれたのだ!?」…もうビックリですよ。自分の存在意義までわかってないヒーローの登場にだただ呆然。大半の子供達はついて行けずに脱落していきました(笑)。
 でもこの作品、実はホント凄いんですよ。主人公は太平洋戦争末期に最終兵器として作られたロボットで、起動したばかりなのでほとんど何も知らない赤ん坊のような状態なわけです。それが人間達との交流や敵との戦いを通して成長していく過程がしっかり描かれているんです。最初は自分が生まれてきた意味すらわからなかったメタルダーが、最終回に「僕は生まれてきて良かった……」と語るシーンはクるものがありました。つ〜か名作ですって、いやホント。
 敵軍団が魅力的というか個性派集団なのも特徴的です。オープニングでも出てきますが、敵軍はめっさ数が多いんですよ。この手の特撮モノって毎回いきなり怪人が出てきていきなりやられてハイさよなら〜ってパターンが多いんですけど、この作品では最初から敵キャラごっそり用意してあって、一回負けても特訓して再戦、なんて真似までやってくれるイカした奴等でした。背負ってるドラマも様々で、ただのやられキャラでは括れない稀有な敵集団だったと思います。
 メカ関連も秀逸です。メタルダーは当時流行ってた外付け武装がほとんど無し。肉弾戦上等のヒーローで、必殺技は手が光る袈裟斬りチョップ…もといレーザーアーム。宇宙刑事モノのレーザーブレードに慣れていた当時の子供達にしてみれば斬新だけどちょっと地味。玩具メーカーにも不評(グッズ作れないもんね)というものでしたが、今見るとカッコいいですよ。んでもって白眉なのがメタルチャージャー。メタルダーが駆る空飛ぶスーパーカーなんですが、見た目はマツダファミリアそのもの。ファミリーカーが申し訳程度の変形して空飛ぶ様はシュールというか何と言うか爆笑でした(笑)。あれが元でファミリアの売上げが伸びたとかいう話は…無いですよねぇ。
 …とまぁ色々書きなぐってしまいましたが、一見の価値はあると思いますので機会があれば是非どうぞ。LD-BOXとか中古で安売りしてないかしら…。